【飲食店経営論】うまくいっているお店、うまくいっていないお店

私はいろんな飲食店で飲み食いするのが好きですが、頭の中ではビジネスの視点で物事を観察しているので、飲み食いしながらそのお店をビジネス面からも観察しています。
お酒や料理のメニュー構成、お酒や料理の質と価格、店主やスタッフの接客態度、客層、客の入り具合(回転率)、常連と一見客の構成、お店の特徴、などなど。

これまでたくさんの飲食店を経験し、特に新橋については、飲食店の方々とも交流を深め飲食店経営者の本音も聞いてきました。
そんな経験から、最近の飲食店経営事情について雑感を述べてみます。
今年に入って、特に東日本大震災以降、複数の飲食店経営者から、「お客さんが減り経営が苦しい」という話をよく聞きました。

全般的な経済動向を考えれば、経営が苦しいのは飲食業界に限らず産業界全般に共通することでしょう。
そういう点では、他の業界で働くお客さんの収入が減り、その結果お客さんの外飲みが減り、その影響が飲食店経営に反映するというのは当然の流れかもしれません。
とはいえ、飲食店の多くは個人経営なので、客の入りは死活問題です。
だから、嘆くばかりではなく現状打破のために何かしなければならないわけですが。

ところで、新橋の飲食店を見ていると、うまくいっている飲食店、うまくいっていない飲食店があることに気付きます。
うまくいっていると言っても、こんな不景気なご時勢だから、右肩上がりで稼ぎが増えているということではなく、客があまり減らずそこそこの集客を維持できいるというレベルですけどね。
ただ、お客さんが激減し経営がそうとう苦しい飲食店に比べたら健闘していると言っていいでしょう。

今のご時勢にあって、うまくいっている飲食店、うまくいっていない飲食店の違いってどこにあるのでしょうか?
私は、お酒や料理の質と価格もさることながら、差別化としての店主やスタッフのキャラや接客態度かなと思っています。
新橋にはお酒や料理のメニューが豊富で、質もそこそこ良くて安いお店というのはたくさんあります。
だから、そういう面での競争では他店と差別化をはかるのは難しいでしょう。

いくらお酒や料理のメニューが豊富で、質もそこそこ良くて安いといっても、お客さんは、自分の収入が減れば自分の生活のほうを優先しようとするので、外飲みによる出費を減らそうとします。
それでも、外飲みを減らしながらも心の拠り所を求めてお店に足を運びます。
その時に足を運びたくなるのは、店主やスタッフの顔が見え、お互いの関係において安心感が持てるお店です。

「たまには飲みに行きたいな」という気分になった時、少ない飲み予算の中から貴重な出費をするわけですから、飲みに行くお店はいつもより厳選します。
私が新橋でよく飲んでいた時は何軒もハシゴしていましたが、予算が限られている時はやっぱりお店を選びました。
お店を選んだ時には、必ず店主やスタッフの顔が思い浮かんだものです。

新橋は飲食店激戦地域だけあって競争は激しいのですが、一方で、新橋は儲かる場所だと思われているのか、たくさんの新規店がぞくぞく出店しますし、既存のお店も分店をつくって事業拡大をはかったりしています。
経営者の気持ちはわからないわけではありませんが、新橋も全体のパイは限られているし、そのパイも景気の影響を受けて小さくなっているのが現状です。
そんな中での新規出店や事業拡大は他店のお客さんを奪うことを意味すると同時に、共食いであることも意味するので、共存共栄ではなくお互いに消耗戦に突入しお互い疲弊する道をたどる可能性もあります。

新橋には私の行き着けのお店がたくさんあり、飲み仲間もたくさんいます。
それぞれのお店からは飲みへのお誘いがよくありますし、飲み仲間たちは自分が贔屓にしているお店をよくPRして集客に協力しています。
お客さんの中には複数のお店を行き着けにしている人も多いので、そのお客さんがどこのお店を選ぶかによってそれぞれのお店に利益をもたらしたり、もたらさなかったりするわけです。
ずっと同じお店を贔屓にしてそのお店だけに通っていたお客さんを別のお店に勧誘し、そのお客さんが別のお店に通い出すようになったら、お店は自分のお店のお客さんを勧誘した人や別のお店に対して快く思わないでしょう。

でも、残念ながらお店側にはどうすることもできません。
お店はあくまでお客さんあっての商売なので、お客さんが来店してくれるだけでもありがたく思わなければなりません。
「何であんなお店なんか行くんだよ」とお客さんを責めてお客さんの心証を悪くしまったら、それこそ大事なお客さんを失ってしまいかねません。
お店の人が他店の悪口を言うのも同じ印象を与えます。

何十年も営業し続け、その間そこそこの繁盛を維持できている飲食店を見ていると、やっぱり、店主やスタッフの気配り、コミュニケーション術、接客態度の良さを感じます。
そういうお店は常連さんがしっかり支えているし、一見客でも安心して利用しているような気がします。
一般的な経営論でいえば、不景気で売れない状況の時は、既存顧客(常連さん)を大事にし、へたに新規客を狙って事業を拡大しないことが賢明です。
なぜかといえば、新規客の獲得(事業拡大)はかける労力、コストのわりには得るものが少ないからです。

うまくいっている飲食店はそのことが経験的にわかっているのかもしれません。

不景気で客が減り、稼ぎが少ない時は、逆転の発想で、自分のお店や自分の仕事のし方を見直すチャンスです。
うまくいっている他のお店と比べて自分のお店はどうなのか、お店の特徴は出せているか、自分の仕事のし方はお客さんに受け入れられているか、お客さんを無視して自分本位で商売していないか、スタッフはちゃんと接客しているか、常連さんが離れていっていないか、メニューや値段の見直しの努力はしているか、料理人・経営者として自己研鑽に励んでいるか。
今の時代、飲食店は経営者によって優劣が決まりそうです。
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by yoron-shinbashi | 2011-11-17 07:24 | 新橋あれこれ  

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